「ほうれい線に糸リフトって、本当に効くの?」その疑問に研究データで検証
ほうれい線が気になり始めると、鏡を見るたびにため息が出る。そんな経験をお持ちの方も多いはずです。糸リフトが候補に挙がっても、「実際どのくらい変わるの?」という疑問が残って、なかなか一歩を踏み出せない方は少なくありません。カウンセリングでよく『本当に変わるの?』とご質問いただきますが、
今回お伝えしたいポイント
- ほうれい線に対する糸リフトの改善効果を示す研究データ
- バーブドスレッドが中顔面に与えるリフト効果について
- ほうれい線に適した糸の種類と挿入角度の違い
- 糸リフトのリスクと限界についてのエビデンス
- 施術を検討する際に確認しておきたいポイント
「切る手術は怖いけど、ほうれい線を何とかしたい」「ヒアルロン酸だけでは物足りなくなってきた」。そのような方々に、感覚的な体験談ではなく、臨床研究の数値をもとにお伝えします。
研究が示す「ほうれい線リフト効果」の実際のデータ
糸リフトの効果に関する臨床研究では、中顔面リフトの改善報告例があります。3D双方向バーブドスレッドを用いた施術において、鼻唇溝の深さに改善がみられた症例が確認されています。ただし、測定条件や対象者の選定基準、個人の肌質や骨格によって結果には幅があることも併せて報告されています。
従来の「患者満足度」だけの評価と異なり、数値で効果を確認できる研究は貴重ですが、すべての方に同様の効果があるわけではないことを理解しておくことが大切です。
3D双方向バーブドスレッドとは、糸の表面に多方向の突起(バーブ)がついた特殊な構造の糸です。従来の一方向バーブに比べて、組織への固定力が高いとされており、立体的なリフト効果が期待される場合があります。
施術後、中顔面の軟部組織が上方へ移動し、ほうれい線の深さに改善傾向がみられる症例があると報告されています。ただし、効果には個人差があり、年齢・肌質・たるみの程度により結果は変動することも併せて報告されています。
なぜ「ほうれい線」に糸の種類と挿入角度が重要なのか
ほうれい線の改善というと、「ほうれい線に直接糸を入れる」とイメージする方もいるかもしれません。しかし実際には、ほうれい線そのものではなく、頬の中顔面エリアをリフトすることで間接的にほうれい線を浅くするというアプローチが主流です。
ここで効果を左右するのが、糸の種類と挿入角度です。
糸の種類による違い
- バーブドスレッド(コグ付き糸):突起が組織に引っかかり、物理的にリフトする。ほうれい線改善の報告例があるタイプ
- スムーススレッド(突起なし糸):コラーゲン生成を促す目的が中心。リフト効果は限定的で、ほうれい線の深い溝には効果が不十分な場合がある
- 3D双方向バーブドスレッド:複数方向への固定力を持ち、ほうれい線への効果が期待される場合があるタイプ
挿入角度の影響
糸を頬骨方向へ斜め上に挿入するか、こめかみ方向へ挿入するかで、リフトのベクトル(方向と力の向き)が変わります。ほうれい線を改善するには、鼻唇溝に対して垂直に近い方向へ引き上げるベクトルが重要とされています。
つまり、同じ「糸リフト」でも、使用する糸と挿入設計によってほうれい線への効果は大きく異なります。臨床経験から、こうした技術的要因が結果の違いを生むケースを多く見てきました。
エビデンスから見る糸リフトの総合的な効果と持続期間
糸リフト全般の効果については、2021年に発表された包括的レビューが参考になります。この論文では、複数の臨床研究を横断的に分析し、糸リフトのエビデンスを整理しています。
Atiyehら(2021)のレビューによると、糸リフトは軽度から中等度のたるみに対して改善報告例があり、重度のたるみに対しては外科的フェイスリフトが依然として優位とされています(DOI: 10.1097/PRS.0000000000007890)。
持続期間についても興味深いデータがあります。素材や糸のタイプによって異なりますが、Atiyehら(2021)のレビューによると、一般的には6か月〜18か月程度の効果持続が報告されています(DOI: 10.1097/PRS.0000000000007890)。ただし、個人差が大きく、肌質・たるみの程度・糸の本数・施術者の技量によって結果は変動します。
「永久に持つ」とうたう施術には注意が必要です。現時点のエビデンスでは、糸リフトは定期的なメンテナンスが前提の施術と位置づけられています。
知っておくべきリスクと限界——「両刃の剣」としての糸リフト
糸リフトの効果を期待する一方で、リスクについても正直に知っておくことが大切です。Tong L ら(2019)の総合レビューでは、糸リフトを「double-edged suture(両刃の縫合糸)」と表現し、効果とリスクの両面を分析しています(DOI: 10.1097/DSS.0000000000001921)。
報告されている主なリスク
- 糸の露出・透見:皮膚が薄い部位では糸が透けて見えたり、飛び出したりすることがある
- 左右非対称:挿入位置やテンションの微妙な差で、左右差が生じる可能性
- 感染:頻度は低いものの、挿入部位からの細菌感染リスクがゼロではない
- 引きつれ感・違和感:施術後しばらくは、表情を動かした際に違和感を覚えることがある
- 効果の限界:重度のたるみ、皮膚の余剰が多い場合は糸だけでの改善に限界がある
ただし、このレビューでは重篤な合併症の頻度は比較的低いことも示されています。リスクを正しく理解した上で、自分のたるみの程度に合った施術かどうかを医師と相談することが重要です。
ほうれい線に糸リフトを検討する際の5つのチェックポイント
ここまでのエビデンスを踏まえて、ほうれい線改善のために糸リフトを検討する際に確認しておきたいポイントをまとめます。
- たるみの程度は軽度〜中等度か:重度の場合は他の選択肢も含めて相談する
- 使用する糸の種類を確認する:バーブドスレッドか、スムーススレッドか。ほうれい線にはリフト力のある糸が適している
- 挿入デザインの説明を受ける:何本をどの方向に入れるか。ほうれい線改善に適したベクトル設計がされているか
- 持続期間の見通しを聞く:半年〜1年半が一般的。「永久」を約束する施設は慎重に判断する
- リスク説明が丁寧か:効果だけでなく起こりうるトラブルについてもきちんと説明してくれるか
「ほうれい線に糸リフトが合うかどうか」は、一人ひとりの顔の構造や肌質、求めるゴールによって異なります。インターネットの情報だけで判断せず、対面での診察を受けることをおすすめします。
まとめ——研究データを踏まえた現実的な選択を
糸リフトによるほうれい線改善は、研究や包括的レビューによって一定の効果報告例があることが確認されました。特にバーブドスレッドを用いた研究では、ほうれい線の深さに改善がみられた症例があることが報告されています。
一方で、糸の種類・挿入角度・たるみの程度によって結果は大きく異なること、そして持続期間に限りがあり個人差があることも、エビデンスが示す事実です。
効果を過度に期待せず、現実的な改善を目指すこと。それが施術後の満足度を高めるポイントです。
気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。Zetith Beauty Clinicでは、医学的根拠に基づいたカウンセリングを行っております。
この記事を書いた人
中村 宏光 医師
Zetith Beauty Clinic 銀座・大阪・福岡
日本国内および国際学会での研究発表実績を持ち、Zetith Beauty Clinic全体の技術指導・教育にも携わる。解剖学的根拠に基づいた精密な鼻整形を専門とし、一人ひとりの骨格や組織に合わせた自然な仕上がりを追求している。
参考文献
- Park B. Prospective Study of Three-Dimensional Bi-directional Barbed Threads for Midface and Nasolabial Fold Rejuvenation. Aesthetic Plastic Surgery. 2026 (DOI)
- Atiyeh B, Chahine F, Ghanem O. Percutaneous Thread Lift Facial Rejuvenation: Literature Review and Evidence-Based Analysis. Aesthetic Plastic Surgery. 2021 (DOI)
- Tong L, Rieder E. Thread-Lifts: A Double-Edged Suture? A Comprehensive Review of the Literature. Dermatologic Surgery. 2019 (DOI)