フェイスリフトの種類と違い:あなたに最適なリフトアップ術はどれ?

カダバー研究で判明した、術式ごとの引き上げ量の差。

この記事でわかること:

  • SMAS法(筋膜引き上げ)の根本的な仕組みと、皮膚だけを引き上げる手術との違い
  • SMASplication、SMASectomy、Deep Plane法など、各種術式の特徴とデータに基づく比較
  • あなたの年齢やたるみの状態、ダウンタイムの許容度に合わせた最適な術式の選び方

フェイスリフトに興味はあるけれど、種類が多すぎて何が違うのかわからない」「高いお金を払うなら絶対に失敗したくない」とお悩みではありませんか?クリニックのサイトを見ても専門用語ばかりで、どれが自分に合うのか迷ってしまいますよね。この記事では、顔の解剖学や最新の医学論文のデータに基づき、各術式の違いを分かりやすく解説します。

1. SMAS法とは何か——皮膚だけでなく構造ごと引き上げる理由

フェイスリフトの術式を理解する上で、絶対に知っておくべきキーワードが「SMAS(表在性筋膜:Superficial Musculo-Aponeurotic System)」です。1976年にMitzとPeyronieによって医学的に定義されたこの組織は、顔の表情筋を包み込み、皮下脂肪を層状に分割している薄くて強靭な膜のことです。顔の老化は、皮膚が単に伸びるだけでなく、このSMASや、骨と皮膚を繋ぐ「リテイニングリガメント(維持靭帯)」が加齢によって緩むことで、顔の組織全体が下垂する現象(下垂の連鎖)によって引き起こされます。

昔のフェイスリフトは、単に皮膚だけを剥がして引っ張り、余った皮膚を切り取る「皮下リフト(Subcutaneous Lift)」が主流でした。しかし、皮膚だけを引っ張ると、すぐに後戻りしてしまうだけでなく、傷跡に強い張力がかかって傷が目立ったり、顔が横に引っ張られたような不自然な仕上がり(Lateral sweep)になるという致命的な欠点がありました。

そこで現代の主流となったのが、皮膚の下にある「SMAS」ごと引き上げる『SMAS法』です。SMASという土台の構造ごとしっかりと引き上げて固定することで、皮膚自体には無理な引っ張る力をかけずに済みます。これにより、傷跡が綺麗に治りやすく、かつ自然で長持ちするリフトアップ効果が得られるようになったのです。現在「フェイスリフト」と呼ばれるものの多くは、このSMASを何らかの形で処理する術式を指しています。

2. SMASplicationとSMASectomy——何が違うの?カダバー研究が示すデータ

一口にSMAS法と言っても、そのSMASを「どう処理するか」によってさらに種類が分かれます。代表的なアプローチが「SMASplication(折り畳み縫縮法)」と「SMASectomy(切除法)」です。

SMASplication(スマース・プリケーション)は、1995年にRobbinsらによって再流行した手法で、SMASを切らずに折りたたんで糸で縫い合わせることで引き上げ効果を狙う術式です。SMASが薄く、切り離そうとすると破れてしまうような患者に適しています。一方、SMASectomy(スマース・エクトミー)は、1997年にBakerによって提唱された手法で、耳の前のSMASの一部を帯状に切り取り、その切り口同士を縫い合わせる術式です。SMASの余分な重なりをなくすため、たるみが強い場合でもスッキリとさせやすいのが特徴です。

ここで気になるのが、「術式によって本当に引き上げ効果に差があるのか?」という点です。カダバー(解剖用献体)を用いた医学研究は、生体では難しい厳密な効果の比較を可能にします。Mohammadiらは、9体の新鮮なカダバー(平均年齢53.1歳)を用いて(Mohammadiら 2015)、顔の左右で「SMASplication」と「MACS法(後述)」を行い、引き上げ量を比較する画期的な研究を行いました。その結果、マリオネットラインや口角の引き上げにおいて、SMASplicationはMACS法よりも有意に大きなリフトアップ効果(垂直方向に2cm以上の引き上げ(Mohammadiら 2015))を示したことが実証されています。カダバー研究のデータは、しっかりとSMASを剥離して引き上げる術式(Plication等)が、いかに物理的なリフト量に優れているかを裏付けています。

フェイスリフト4術式 徹底比較(論文データベース)
比較項目 SMAS-plication SMAS-ectomy Deep Plane Composite
剥離層 SMAS折り畳み縫縮 SMAS帯状切除 SMAS下・靭帯処理 SMAS+眼輪筋
引き上げ効果 2cm以上垂直 重度たるみ向き 中顔面まで到達 最も広範な組織移動
持続期間 5〜8年 5〜8年 8〜12年 8〜12年以上
ダウンタイム 2〜3週間 2〜3週間 3〜4週間 4週間以上
技術難度 ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★★
出典: Mohammadi 2015, Wong 2025, Kao 2024, Wan et al. 2015をもとに作成

3. High-SMAS法とDeep Plane法——中顔面まで攻める深い術式

たるみが進行し、ほうれい線や目の下のたるみ(中顔面のたるみ)が目立つようになってきた場合、通常のSMAS法では引き上げの力が中心部まで届きにくいという問題があります。これを解決するために開発されたのが、より深く、より広範囲を剥離する「High-SMAS法」と「Deep Plane法」です。

High-SMAS法は、Bartonらによって開発された術式で、通常のSMAS法よりもさらに高い位置(頬骨弓の上)からSMASを引き上げることで、頬の高い位置にある組織を垂直方向に強力に持ち上げます。
Deep Plane(ディーププレーン)法は、1990年にHamraによって発表された術式で、SMASの下(表情筋の上)というさらに深い層に進入し、強力な靭帯(リテイニングリガメント)を直接切り離すことで、顔面全体をブロックとして一度に引き上げます。

アジア人向けに最適化されたDeep Plane法とは?
フェイスリフトの技術は主に欧米で発展してきましたが、白人とアジア人では骨格や皮膚の厚さが根本的に異なります。Wongらの研究(2025年)によれば、アジア人の顔は横幅(頬骨の張り出し幅)が広く、皮膚や皮下組織が厚く重いという特徴があります。そのため、耳の周辺など「外側」から引っ張るだけの従来の術式では、頬骨の幅が物理的な障壁となり、ほうれい線などの顔の中心部のたるみまで力が伝わりません。

そこで、アジア人のたるみを根本から解決するために最適化されたのが、拡張型のDeep Plane法です。Wongらは、アジア人の厚い組織を靭帯ごと解放し、顔のより中心に近い位置(前顔面)で直接引き上げて固定する改良を加えました。この手法で手術を受けた61名のアジア人患者(Wongら 2025)の追跡調査では、なんと98%が「満足」または「非常に満足」と回答(Wongら 2025)しており、アジア人特有の重い組織や深いほうれい線に対して、Deep Plane法がいかに圧倒的な効果を持つかが示されています。

4. MACS法——ミニマル侵襲で早期回復を狙う術式

MACS法は傷が少ない。でもDeep Planeを選ぶ理由がある
「効果は欲しいけれど、切開範囲はできるだけ小さくしたい」というニーズに応えて開発されたのが、2002年にTonnardらによって発表されたMACS(Minimal Access Cranial Suspension)法です。これは耳の前の短い切開(ショートスカー)のみでアプローチし、SMASに特殊な糸(巾着縫合)をループ状にかけて垂直方向に引き上げる術式です。組織を広く剥離しないため、神経損傷のリスクが低く、ダウンタイムが非常に短い(早期回復が見込める)のが最大のメリットです。

しかし、メリットばかりではありません。Kaoらの22年間にわたる600症例(Kaoら 2024)の分析によれば、MACS法などの耳の前を切開してループ状の糸で引き上げる手法には限界があることが指摘されています。糸のループによる牽引は組織に不自然なひきつれを生じさせる可能性があり、また耳の前の皮膚を引っ張ることで、もみあげの位置が後退してしまったり、耳の穴の前(耳珠)の形状が平坦になるなど、フェイスリフト特有の「手術をした感(Stigma)」が出てしまうリスクがあります。

さらに前述のWongらのデータが示す通り、アジア人の重い組織やほうれい線には、MACS法のような外側からの牽引だけでは力が届きません。ダウンタイムが短いというMACS法の魅力は大きいですが、重度のたるみを改善したい場合や、アジア人特有の骨格に合わせて根本的な若返りを図りたい場合には、一時的な傷の少なさよりも、靭帯をしっかり処理して顔面構造ごと引き上げるDeep Plane法が選ばれる明確な理由がここにあります。

5. 術式の選び方——たるみの程度・年齢・ダウンタイムで決まる

ここまで様々な術式を見てきましたが、最も重要なのは「自分の状態やライフスタイルに合った術式を選ぶこと」です。たるみの程度、年齢、許容できるダウンタイム(回復期間)、そして執刀医の技術力によって最適な選択肢は変わります。

【20〜30代:軽度のたるみ・予防目的】
まだたるみが重度ではなく、マイルドな変化や将来の予防を求める場合は、ダウンタイムの短いMACS法や、内視鏡を用いたミニリフトなどが適しています。早期の復帰が可能で、自然な仕上がりが期待できます。

【30代後半〜40代:中等度のたるみ】
フェイスラインの崩れや口元のマリオネットラインが気になり始めたら、SMASplicationやSMASectomyなどの標準的なSMAS法がバランスの良い選択肢です。Mohammadiらのデータが示すように、しっかりとした物理的リフト効果が得られます。

【40代〜:重度のたるみ・ほうれい線】
深いほうれい線や、中顔面(頬の前面)のボリューム低下、重い組織の下垂に悩んでいる場合は、High-SMAS法やDeep Plane法が適しています。特にアジア人の場合は、Wongらが実証した通り、靭帯を切り離すDeep Plane法でなければ十分な効果が得られないケースが多くなります。技術難易度は極めて高いため、解剖学に精通した熟練の専門医を選ぶことが必須です。

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6. この記事のまとめ

SMAS術式の比較
術式特徴リフト量ダウンタイム適応
SMASplication
(折り畳み)
確実なリフト効果2cm以上中程度中〜重度のたるみ
MACS法切開が少ない中程度短い軽〜中度のたるみ
Deep Plane法靭帯を直接処理最大やや長いアジア人に最適

気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Mohammadi S, Ahmadi A, Salem M, et al. A Comparison Between Two Methods of Face-Lift Surgery in Nine Cadavers: SMAS (Superficial Musculo-Aponeurotic System) Versus MACS (Minimal Access Cranial Suspension). Aesthetic Plastic Surgery. 2015 DOI
  2. Wong C, Hsieh M, Mendelson B. Deep Plane Face Lift in Asian Patients. Plastic & Reconstructive Surgery. 2025 DOI
  3. Kao C, Duscher D. The Ponytail Lift: 22 Years of Experience in 600 Cases of Endoscopic Deep Plane Facial Rejuvenation. Aesthetic Surgery Journal. 2024 DOI
  4. Wan D, Small K, Barton F. Face Lift. Plastic and Reconstructive Surgery. 2015 DOI
中村 宏光

この記事を書いた人

中村 宏光 医師

Zetith Beauty Clinic 銀座・大阪・福岡

日本国内および国際学会での研究発表実績を持ち、Zetith Beauty Clinic全体の技術指導・教育にも携わる。解剖学的根拠に基づいた精密な美容医療を専門とし、一人ひとりの骨格や組織に合わせた自然な仕上がりを追求している。