ディーププレーンフェイスリフトとは?従来のSMAS法との主な違いの一つ
鏡を見るたびに気になる顔のたるみに、「このたるみさえなくなれば、もっと自分に自信が持てるのに……」と感じることはありませんか?

たるみ治療について調べているうちに、手軽な糸リフトや「切るフェイスリフト」の情報を目にして、効果や持続性、自然さについての疑問を感じている方も多いでしょう。
一般的なフェイスリフトや糸リフトでは、数年で効果が減弱したり、不自然な表情になったりする場合があります。これは、顔の深層にある特定の解剖学的構造を適切に処理していないことが一因とされています。
本記事では、現在世界の美容外科学会で注目されている治療法のひとつである「ディーププレーンフェイスリフト」について解説します。従来のSMAS法との主な違いと、あなたが検討すべき治療法の選択肢が明確になるでしょう。
「切るフェイスリフト」の限界と進化の歴史
フェイスリフトの歴史は、より自然で長持ちする結果を求める外科医たちの探求の歴史でもあります。Wan et al.(2015年)の論文によれば、1900年代初頭から中盤にかけての初期のフェイスリフトは、単に皮膚だけを剥離して引っ張り、余分な皮膚を切り取る「皮下リフト(Subcutaneous lift)」でした。
しかし皮膚は伸縮性のある組織です。重い内部の脂肪や筋肉を皮膚の力だけで支えようとすると、すぐに伸びてたるみが再発してしまいます。また、無理に引っ張ることで皮膚に過度な緊張がかかり、いわゆる「風洞に顔を突っ込んだような」不自然な引きつれ顔(pulled look)になったり、傷跡が広がってしまったりするという致命的な欠点がありました。
そこで1970年代に登場したのが「SMAS(表在性筋膜)法」です。顔の皮下脂肪の奥には、表情筋と連動するSMAS(表在性筋膜)と呼ばれる筋膜の層があります。皮膚だけでなく、この筋膜の層を引き上げて固定することで、よりリフトアップ効果を高めようとしたのです。現在、多くのクリニックで行われている切るフェイスリフトは、この「SMAS法」のバリエーション(SMASを折りたたんで縫うだけの簡便な方法など)であることがほとんどです。
では、SMAS法でたるみ治療の問題はすべて解決したのでしょうか?
従来のSMAS法の解剖学的限界
実は、従来のSMAS法には解剖学的な限界が存在していました。
筋膜層の下には、顔の皮膚や脂肪、筋膜を骨にしっかりとつなぎとめている「支持靭帯(リガメント)」と呼ばれる強固な線維性組織が複数存在します。頬骨のあたりや顎のラインにあるこの支持靭帯は、加齢とともに垂れ下がった組織を、その低い位置で強力に固定してしまっています。
従来のSMAS法では、この支持靭帯を完全に切り離すことはしません。支持靭帯のすぐ奥には顔の表情を動かす非常に重要な「顔面神経」が走っています。深い層を安全に剥離するには極めて高度な解剖学的知識と熟練の技術、そして十分な手術時間が必要だからです。
支持靭帯を解除しないまま筋膜を引っ張っても、本当に引き上げたい口元のたるみ(マリオネットライン)やほうれい線の根元部分は十分に持ち上がらない場合があります。無理に引っ張れば、不自然なテンションがかかり、効果が長続きしない原因となります。
この支持靭帯を根底から解除し、顔の組織を若々しい位置へ「塊(ブロック)」として移動させる革新的なアプローチ。それこそが、次に解説する「ディーププレーン」なのです。
ディーププレーンフェイスリフト:根本からの改善が期待される治療選択肢
ディーププレーンフェイスリフト(Deep Plane Facelift)は、1990年にHamraによって提唱され、その後数十年にわたり世界のトップサージャンたちによって洗練されてきた効果的なリフトアップ術です。従来のSMAS法との最大の違いは、アプローチする「深さ」と「支持靭帯の処理」にあります。

顔面神経の直上、深い層(ディーププレーン)への進入
ディーププレーンフェイスリフトでは、筋膜層のさらに奥、表情筋と顔面神経が存在する直上のスペース(ディーププレーン)に進入します。そして、組織を下垂した位置に固定してしまっている支持靭帯を、直視下で安全かつ完全に切り離します。
これにより、皮膚、皮下脂肪、筋膜層がひとつの分厚い塊(コンポジットフラップ)として完全に自由になります。支持靭帯が解除された組織は、無理な力をかけることなく、元の若々しい高い位置へと滑るように移動させることができます。
アジア人の骨格と組織に対する有効性
欧米で発展した手術法がアジア人の骨格に適用できるかという疑問もありますが、興味深い研究結果があります。
Wong, Hsieh, Mendelson(2024年)の論文「Deep Plane Face Lift in Asian Patients」によれば、ディーププレーンフェイスリフトは、アジア人の顔にも良好な効果をもたらすことが報告されています。
アジア人の顔は欧米人に比べて頬骨が横に広く、顔が平面的であり、さらに皮膚や皮下組織が厚く重いという特徴があります。従来のSMAS法でこの重い組織を無理に斜め上や横方向に引っ張ると、顔がさらに平たく、横に広がったように見えてしまうリスクがありました。
一方、ディーププレーンフェイスリフトでは組織を「塊」として自然なベクトルで引き上げることが可能とされています。Wongらの研究では、2021年から2023年にかけて61人のアジア人患者(平均年齢52歳)にディーププレーンフェイスリフトを実施し、多くの患者様に満足いただける結果が得られたと報告されています。
ただし、合併症についても報告されており(耳裏の表皮剥離3%、肥厚性瘢痕1.6%、一過性の顔面神経麻痺1.6%など)、個人差があることや、事前に医師と十分なリスクの相談が必要であることを十分理解しておく必要があります。
重い組織を根本から解放し、無理なく本来の位置へ戻すことで、アジア人特有の重いたるみや深いほうれい線、マリオネットラインの改善が期待される場合があります。
大規模データが示す臨床結果
さらに、KaoとDuscher(2024年)による論文「The Ponytail Lift: 22 Years of Experience in 600 Cases of Endoscopic Deep Plane Facial Rejuvenation」では、22年間で600件の内視鏡を用いたディーププレーンアプローチのデータを分析しています。この研究における患者の平均年齢は50.9歳で、実に80.8%がマリオネットライン周辺のたるみ(jowls)、57%が首のたるみ、47.4%がほうれい線の深さに悩んでいました。
この長期的な大規模データにおいても、皮弁(皮膚のフラップ)の壊死は1件も発生せず、永久的な神経損傷もゼロという結果が報告されています。ただし、これらは研究報告であり、個々の症例により結果は異なる可能性があります。手術には必ずリスクが伴うため、医師との十分な相談が重要です。
また、ディーププレーンでは皮膚を皮膚層単独で無理に引っ張らないため、皮膚の血流が温存され、術後の回復が早く、不自然な傷跡を防ぐことができると報告されています。皮膚の過度な緊張を避けることは、アジア人に多い肥厚性瘢痕(傷跡が赤く盛り上がる現象)を防ぐためにも極めて重要です。
ディーププレーンフェイスリフトの技術的特徴
ディーププレーンフェイスリフトがいかに理にかなった治療法の選択肢であるかをご理解いただけたと思います。この治療法の特徴について、さらに詳しく解説します。

高度専門技術として位置づけられる理由
ディーププレーンフェイスリフトは「マニュアル化して標準的に行うことが困難な、極めて難易度の高い手術」として位置づけられています。
この手術では、患者一人ひとりの顔の骨格、脂肪のつき方、筋肉の付き方を詳細に分析する必要があります。そして顔面神経のギリギリの層をミリ単位で剥離していく技術が求められます。
ディーププレーンフェイスリフトは、顔の深い解剖構造を熟知し、長年の修練を積んだ限られた外科医にしか安全に遂行できません。神経損傷のリスクを確実に回避しながら支持靭帯をリリースし、組織を再配置するには、執刀医の高度な技術と、患者一人ひとりに十分な時間をかける誠実な姿勢が不可欠です。
根本的な改善を求める方へ
40代、50代の女性にとって、顔のたるみは単なる外見の変化ではなく、自信や活力といった内面にも深く関わる問題です。だからこそ、表面的なその場しのぎの治療で妥協してはいけません。

従来のSMAS法では届かなかった解剖学的構造を適切に処理し、支持靭帯を解除して顔全体を深層から若々しい位置へと再構築するディーププレーンフェイスリフト。Wongらの研究(2024年)が示す通り、アジア人の骨格や肉厚な組織にも良好な効果が報告されており、一定の結果が期待される治療選択肢です。また、KaoとDuscherの研究(2024年)が示すように、適切なディーププレーンのアプローチは血流を温存し、自然で長持ちする結果をもたらすことが期待される場合があります。
本当に効果があり、5年後、10年後も美しい自然な表情を維持したいとお考えの方は、ディーププレーンフェイスリフトの技術を習得した専門医に相談されることをお勧めします。
ゼティスビューティークリニックでは、世界の最先端の解剖学と美容外科学の知見に基づき、患者様一人ひとりの骨格と組織の状態を詳細に見極めるオーダーメイドのたるみ治療を提供しています。私たちは効率性よりも品質を重視し、ディーププレーンフェイスリフトをはじめとする高度な技術で、あなたの顔の根本的な改善をサポートいたします。不自然な引きつれのない、なめらかな輪郭と輝くような自信を取り戻すために。まずは一度、ゼティスビューティークリニックの専門医による本格的なカウンセリングをご体感ください。

参考文献
- Wong C, Hsieh M, Mendelson B. Deep Plane Face Lift in Asian Patients. Plastic & Reconstructive Surgery. 2025 (DOI)
- Kao C, Duscher D. The Ponytail Lift: 22 Years of Experience in 600 Cases of Endoscopic Deep Plane Facial Rejuvenation. Aesthetic Surgery Journal. 2024 (DOI)
- Wan D, Small K, Barton F. Face Lift. Plastic and Reconstructive Surgery. 2015 (DOI)
- Wan D, Small K, Barton F. Face Lift. Plastic and Reconstructive Surgery. 2015 (DOI)
この記事を書いた人
中村 宏光 医師
Zetith Beauty Clinic 銀座・大阪・福岡
日本国内および国際学会での研究発表実績を持ち、Zetith Beauty Clinic全体の技術指導・教育にも携わる。解剖学的根拠に基づいた精密な鼻整形を専門とし、一人ひとりの骨格や組織に合わせた自然な仕上がりを追求している。