その「症例数○万件」、どう数えているか知っていますか?
美容外科クリニックのWebサイトを見ると、「症例数○万件の実績」という表現をよく目にします。数字が大きいほど安心感がある——そう感じるのは自然なことです。
しかし、症例数の数え方には業界統一の基準がありません。同じ「1万件」でも、クリニックによって意味がまったく違うことがあります。
この記事では、患者さんが数字に惑わされず、本当に信頼できるクリニックを選ぶための「数字の読み解き方」を解説します。
症例数の「2つの数え方」
美容外科の症例数には、大きく分けて2つのカウント方法があります。
同じ患者さんの
鼻尖形成(1件)+軟骨移植(1件)+鼻中隔延長(1件) → 3症例
どちらの数え方が「正しい」という公式な基準はありません。しかし、方法Bでは同じ患者数でも症例数が3〜10倍に膨らむことになります。
計算してみよう——「症例数○万件」の物理的な限界
ここで簡単な算数をしてみましょう。あるクリニックが「開院5年で症例23,500件」と謳っているとします。
1日18.8件。これは方法A(1患者=1症例)で数えた場合、物理的にほぼ不可能な数字です。
なぜ不可能なのか
仮に最速の2時間で回したとしても、1日18.8人 × 2時間 = 37.6時間。24時間を超えます。
医師が5人いても、1人あたり1日3.8件 × 2時間 = 7.6時間。休憩なしのフル稼働でようやく計算が合う水準です。
つまり、「開院5年で23,500件」という数字が方法B(施術オプション別カウント)で算出されている可能性が極めて高いことがわかります。
数え方による見え方の違い
同じクリニックの実態でも、数え方で印象はこれだけ変わります。
同じ800人の患者さんを診ていても、方法Bでは3.5倍の「14,000件」として発表できてしまいます。
症例数よりも見るべき5つの指標
では、クリニック選びで本当に確認すべきことは何でしょうか。
まとめ——数字の「大きさ」より「定義」を確認しよう
- ☑ 「症例数」の定義(1患者=1件?施術別?)を質問する
- ☑ クリニック全体ではなく、担当医師の経験を確認する
- ☑ 症例写真は「同条件」で撮られた長期経過を見る
- ☑ カウンセリング時間がしっかり確保されているか聞く
- ☑ 「症例数○万件」の裏にある計算を自分で逆算してみる
美容外科選びで大切なのは、数字の「大きさ」に安心することではなく、その数字が「何を意味しているか」を理解することです。
信頼できるクリニックは、数字の定義を聞かれても堂々と答えてくれるはずです。まずはカウンセリングで「症例数はどのように数えていますか?」と聞いてみてください。その回答で、クリニックの誠実さが見えてきます。
この記事を書いた人
中村 宏光 医師
Zetith Beauty Clinic 銀座・大阪・福岡
日本国内および国際学会での研究発表実績を持ち、Zetith Beauty Clinic全体の技術指導・教育にも携わる。解剖学的根拠に基づいた精密な鼻整形を専門とし、一人ひとりの骨格や組織に合わせた自然な仕上がりを追求している。