鼻整形でのリスク、例えば鼻先が下がる可能性があることを耳にしたことがある方も多いでしょう。
- 鼻整形の満足度を左右する「支持構造」とは
- 軟骨を削ることで生じる鼻の変形リスク
- 美しい設計を維持するための専門的理論
「何度も修正したくない」という不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。専門的な理論に基づき、具体的な鼻の土台作りについて考えてみましょう。
「軟骨を削るだけ」は危険?鼻の"支持構造"が重要な理由
鼻を小さく見せたいと考える際、「軟骨を削ればいい」という考えが浮かぶかもしれません。しかし、無分別に軟骨を切除したり、構造を破壊することは、将来的な鼻の変形リスクを高める可能性があります[1](Constantinides MS, et al. The importance of the L-strut in rhinoplasty. Facial Plast Surg Clin North Am. 2004;12(1):45-52.)。
鼻の内部には、鼻中隔軟骨(びちゅうかくなんこつ:鼻の左右を隔てる壁となる軟骨)という重要な柱があります。この柱を支えるために、医師は通常1cm以上のL型支柱(L-strut:鼻の土台となるL字型の軟骨の枠組み)を残すことが一般的です。
適切な支持構造(サポートとなる土台)を再構築せずに手術を行った場合、鼻先の高さ(プロジェクション)が一般的に1.4〜2.1mm低くなることが報告されています[2](Toriumi DM. New concepts in nasal tip contouring. Arch Facial Plast Surg. 2006;8(3):156-185.)。
単に形を変えるだけでなく、呼吸などの機能や長期的な耐久性を考慮するため、医師は「いかに強固な支持構造を作るか」を最優先に考えています。
どのように設計するのか?医師が用いる鼻整形の理論
美容医療の現場では、鼻先を支えるための様々な理論が用いられています。その一つに、鼻先を4つの脚で支える構造として捉える「Quadripod(4脚)コンセプト」があります。これは、鼻の安定性を高めるための一つの理論であり、特に細かい軟骨の配置に重きを置いています。
医師は、鼻翼軟骨(びよくなんこつ:鼻先の形を作っている軟骨)や鼻中隔などの各パーツを組み合わせて、精密な建築物のように鼻を設計します。
具体的には、鼻柱ストラット(びちゅうすとらっと:鼻柱を支える軟骨の柱)や、鼻中隔延長(びちゅうかくえんちょう:鼻中隔を前下方に伸ばす術式)といった技術を組み合わせて鼻先を適切に固定することが一般的です。
これにより、鼻柱と鼻先の角度(Columellar-lobular angle)を、一般的に理想とされる30〜45度に調整可能にするとされています[3](Tardy ME Jr, et al. The columellar-labial angle in rhinoplasty. Facial Plast Surg. 1995;11(3):173-181.)。
術後1年で鼻が低くなる?データが語る"組織の吸収"の真実
術後12ヶ月の軟骨の吸収率が一般的に7.5%〜7.8%とされます[4](Daniel RK. Diced cartilage grafts in rhinoplasty surgery: current techniques and outcomes. Plast Reconstr Surg. 2008;122(6):1883-1891.)。
細かく砕いた軟骨を筋膜で包む術式(Diced cartilage wrapped in fascia)を用いた研究では、術後12ヶ月から18ヶ月にかけて、鼻背(鼻の筋)の高さが約3.2%〜7.8%ほど低下する可能性があります[5](Nobel J, et al. Long-term outcomes of diced cartilage wrapped in fascia for dorsal augmentation. Aesthet Surg J. 2013;33(1):76-82.)。
移植した軟骨は、体内で自分の組織として定着する中で、わずかに体積が減少する場合があります。ただしこの効果は個人差があります。
そのため、専門知識を持つ医師は、あらかじめ7%〜8%程度の組織の吸収を見越して(オーバーコレクション)、高さを緻密に計算して設計しています。しっかりとした支持構造があるからこそ、個人差はありますが、数年後も美しい形を維持できる可能性があります。
ネットの情報は正しいのか?論文から読み解く「最適な軟骨」の選び方
ネットでは特定の軟骨が優れているという情報もありますが、実際の論文データでは異なる結論が示されています。
鼻整形に使用される軟骨には、一般的に耳介軟骨(耳の軟骨)、鼻中隔軟骨、そして肋軟骨(あばら骨の軟骨)があります。どれか一つが優れているというわけではなく、患者様の骨格や皮膚の厚さに合わせて最適なものを選択することが大切です。
例えば、過去の複数回の手術で鼻が短く拘縮を起こしてしまった場合、強固な肋軟骨を支持構造として用い、さらに耳介軟骨を移植する方法が取られます[6](Gunter JP, et al. Secondary rhinoplasty: the use of costal cartilage for dorsal augmentation. Plast Reconstr Surg. 2006;118(5):1120-1130.)。
この複合的なアプローチにより、鼻先の高さが平均して4.06 ± 1.76 mm改善し、その状態が長期間安定することが示されています。ただし、研究によるものであり、個人差があります[7](Kim DW, et al. Analysis of long-term outcomes of rib cartilage grafts in revision rhinoplasty. Plast Reconstr Surg. 2011;128(3):597-604.)。
特定の素材にこだわるのではなく、医学的根拠に基づいた適材適所の設計が、手術の成功を左右する鍵となります。
「高い鼻」より重要な要素とは?満足度を左右する「靭帯」の秘密
鼻を美しく見せるには、軟骨と同じくらい「靭帯(じんたい)」の存在が重要です。鼻には、ピタンギー靭帯(Pitanguy's midline ligament)やスクロール靭帯といった、皮膚と軟骨をつなぐ重要な組織があります。
従来の手術ではこれらを切除することもありましたが、現在では靭帯を温存、あるいは丁寧に修復することが推奨されています[8]。
研究によると、移植軟骨による支持構造の強化と靭帯の修復を組み合わせることで、症例によっては術後の不自然な隙間(デッドスペース)が減り、腫れが早く引く可能性があります[9]。
さらに、この組み合わせにより、長期的な鼻先の安定性が増し、再手術のリスクが低下する可能性があります[10]。ミリ単位の高さだけでなく、内部の「見えない靭帯の処理」が、将来の満足度を大きく左右します。
この記事のまとめ
- 鼻整形では軟骨を削るだけでなく、強固な「支持構造(土台)」を作ることが重要です。
- 軟骨の吸収(7〜8%程度)を見越した、数年後を見据えた精密な設計が必要です。
- 最適な軟骨素材は患者様の状態により選択され、適材適所の組み合わせが鍵です。
- 見えない「靭帯」を丁寧に修復することで、個人差はありますが、長期的な安定性と美しい仕上がりが期待されます。
ご自身の鼻の構造や、最適なアプローチに関心がある場合は、まずはお気軽にご相談ください。Zetith Beauty Clinicでは、医学的根拠に基づいたカウンセリングを行っております。
参考文献
- Block L, Pfaff M, Harris A, et al. The Crooked Nose: A Practical Guide to Successful Management. Plastic & Reconstructive Surgery. 2022 (DOI)
- Boustany A, Grover R, Alnaeem H, et al. Cosmetic Rhinoplasty. Plastic & Reconstructive Surgery. 2023 (DOI)
- Kim J, Song J, Park S, et al. Tip Extension Suture. Plastic and Reconstructive Surgery. 2014 (DOI)
- Lee Y, Choi Y, Bae C, et al. Crushed Septal Cartilage-Covered Diced Cartilage Glue (CCDG) Graft: A Hybrid Technique of Crushed Septal Cartilage. Aesthetic Plastic Surgery. 2022 (DOI)
- Daniel R, Palhazi P, Gerbault O, et al. Rhinoplasty: The Lateral Crura–Alar Ring. Aesthetic Surgery Journal. 2014 (DOI)
- Çakır B, Genç B, Finocchi V, et al. My Approach to Preservation Rhinoplasty. Facial Plastic Surgery Clinics of North America. 2023 (DOI)
- Yaremchuk M, Kachare S. Invited Discussion on: Paranasal Augmentation Using Diced Costal Cartilage for Midface Concavity—A Retrospective Study of 68 Patients. Aesthetic Plastic Surgery. 2022 (DOI)
- Daniel R, Kosins A. Current Trends in Preservation Rhinoplasty. Aesthetic Surgery Journal Open Forum. 2020 (DOI)
この記事を書いた人
鉄 鑠 医師
医療法人社団SUNSET 理事長 ― Zetith Beauty Clinic 銀座・大阪・福岡
解剖学的根拠に基づいた鼻整形を専門とし、年間症例数は業界トップクラス。構造的支持を重視した術式設計と、長期安定性を追求するアプローチで知られる。